図書館情報学の(メタ)理論としてのドメイン分析と日本でのヤアラン研究の現状について

  • 発表者: miya
  • 所属: 知識情報・図書館学類 3年

レジュメ・スライド資料

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目次

  • 導入: 図書館情報学とは

    • 図書館情報学の問題点

  • 本論: LISのメタ理論としてのドメイン分析

    • ドメイン分析とは?

    • そもそも理論とは?

  • 結論

  • おまけ:日本でのヤアラン研究の現状


導入:
図書館情報学とは

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導入: 図書館情報学とは

教科書の記述

情報学は研究領野のひとつであり、[中略] 情報コミュニケーション連鎖を構成する各要素に焦点を当てて研究するものである。(Bawden, 2024, p.4)

  • 情報学 = 図書館情報学?
  • 研究領野?
    • 何かしら関心あるトピックや主題に焦点を当てて研究するために、 [中略] 何であれ役立ちそうな領域の知識を用いるもの (ibid, p.3)

  • コミュニケーション連鎖?
    • 情報の作成・流通・組織化・検索・利用・保存・廃棄 (ibid, p.3)


導入: 図書館情報学とは

要するに…

  • 広い意味での情報を対象として、
    それらの獲得・伝達・保存などのふるまい”全体”を研究する分野

  • 対象にまつわる他分野の知見も積極的に活用

  • 図書館サービスでの実践への応用も


図書館情報学の問題点

(メタ)理論がない!

  • The overall situation in information science [/LIS] today is a chaos of theoretical contributions, each paying no or much too little interest in the existing ones,[後略](Hjørland, 2016, p.1797)

  • 今日の図書館情報学の状況はカオスであり、理論的な貢献は既存のものに対して少しも関心を持っていない。

図書館情報学の問題点

理論は他分野からの受け売り?

  • それぞれのLISでの理論(e.g. 情報探索行動モデル)は個別的な分野での適用に留まっている。あるいは包括的な理論は他分野の受け売りであることが多い(e.g. 情報理論)
  • [LISに対して] obtaining a philosphy is something like brrowing a book from our libraries. But like the borrowed books, the borrowed philosophies do not really belong to us, always seem to need to be renewed, and we end up returning them, only to borrow others. (Zwadlo, 1997, p.105)

    • [LISに対しての]の哲学の適用は本を図書館で借りるようなものである。しかしちょうど本を借りるのと同様に、借りた哲学は我々のものでなく、私たちはすぐ返してまた別のものを借りるのである。

本論:
図書館情報学の
(メタ)理論としての
ドメイン分析

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ドメイン分析とは?

形式的な説明

  • デンマークの図書館情報学者であるビアウヤ・ヤアランが提唱

  • 図書館情報学のメタ理論的な枠組み


ビアウヤ・ヤアラン (Hjørland, Birger)

  • コペンハーゲン大学コミュニケーション学部教授
    • 元王立図書館情報大学(RSLIS)教授・リサーチライブラリアン
  • 専門は知識組織化論(Knowledge Organization; KO)
  • 元々は心理学にバックグラウンドがあり、彼の提唱する理論にもその影響が見られる bg left w:25em

ドメイン分析とは?

とりあえず引用してみる(孫引き)

  • ハーテルによる要約を見ておこう。“ドメイン分析は、普遍的な情報現象という考え方を否定し、さまざまな社会的世界の内部における情報パターンに焦点をおく。⋯⋯[ドメイン分析は情報従事者を]資料案内や資料分類表を作成し利用者調査を行うことを通じて、それぞれの主題に精通するよう促すとともに、それぞれの領域の歴史、文化、ものごとに対する理解の仕方、精度のダイナミクスを戦略的に理解するよう促すものである” (Bawden, 2024, p.128)


ドメイン分析とは?

  • ドメイン分析は図書館情報学のメタ理論的な枠組みである。

    • メタ理論とは?

    • ドメインとは?

    • ドメイン分析にはどんな手法があるの?


メタ理論

そもそも理論とは?(Bawden, 2024, p.74-5)

  • 現実を抽象化して一般原則としたもの
  • 説明するもの、あるいは理解を助けるもの
  • 実践の指針として働くもの
  • メタ理論:

    • Metatheories are theories about the description, investigation, analysis or criticism of the theories in a domain. (Hjørland, 2005, p.5)

    • メタ理論とは、ドメイン内での理論についての記述・調査・分析・批判に関わる理論である

ドメイン

  • Hjørlandによると、ドメインは次の3つの観点で説明・定義される(Bawden, 2024, p.127)
  • 存在論的観点: そのドメインでの主対象

  • 認識論的観点: そのドメインでの知識、他ドメインの知識との関係

  • 社会学的観点: そのドメインの構成員


ドメイン分析の手法 (Hjørland, 2002, 2017; Bawden, 2024, p.128)

  • 資料案内とサブジェクトゲートウェイの作成
  • 専門分類表とシソーラスの作成
  • 専門的な主題における索引作成と検索法の調査
  • 実証的な利用者研究
  • 計量書誌学的な研究
  • 歴史研究
  • ドキュメントと「ジャンル」の研究
  • 認識論的・批判的研究
  • ターミノロジーと専門言語の研究および談話分析
  • 情報伝達の構造と制度に関する研究
  • 認知、コンピューティング、人工知能

  • おまけ:
    日本でのヤアラン研究の現状について

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    Tulips Search で検索ワード”Hjørland”でヒットした日本語文献

    • 7件

    • うち適合度下位3つはヤアランと無関係あるいは日本語でない

    • 4件…?→2件

    • (泣)

    2025年 5月 31日(土)10:00~16:00
    日本図書館情報学会 春季研究集会

    • 発表スケジュール
    • 根本彰「ビアウヤ・ヤアラン(Birger Hjørland)の認識論と図書館情報学方法論」

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    参考文献

    • (1)Bawden David, Robinson Lyn. 図書館情報学概論第2版: 記録された情報の力. 田村俊作, 塩崎亮訳. 勁草書房, 2024, 480p., ISBN978-4-326-00061-6.
    • (2) Hjørland, Birger. Book review of Sonnenwald (2016).: Theory Development in the Information Sciences. Edited by Diane H. Sonnenwald. Austin, TX: University of Texas Press, 2016. Journal of the Association for Information Science and Technology. 2017, vol. 68, no. 7, p. 1796–1801.
    • (3) Zwadlo, Jim. We Don’t Need a Philosophy of Library and Information Science: We’re Confused Enough Already. The Library Quarterly. 1997, vol. 67, no. 2, p. 103–121.
    • (4) Hjørland, Birger. Domain analysis in information science: Eleven approaches – traditional as well as innovative. Journal of Documentation. 2002, vol. 58, no. 4, p. 422–462.
    • (5) Hjørland, Birger. Domain Analysis. Knowledge Organization. 2017, vol. 44, no. 6, p. 436–464.